新自由主義との訣別 オバマ新大統領の就任演説(第72回2009年2月9日)

1月20日、アメリカのオバマ新大統領の就任式典がありました(日本時間21日未明)。私はアメリカの建国200年の頃に米国留学を決意し、日米の大学で政治の研究をしていましたので、ジェファーソン、リンカーン、ケネディなど過去の大統領の演説や論文も知っているものですから、格別の感慨をもって現地からの中継を見ました。

冒頭、就任の宣誓を間違えたのには驚きを禁じ得ませんでした。その文章は合衆国憲法で一言一句まで決められており、最高裁長官の先唱を繰り返しておこなうのですが、その長官が間違えてしまったのです(そのままでは就任の効力が発生せず、後で宣誓し直しました)。それはさておき新大統領の演説は、地味とか格調が高くないとの評が多かったようですが、私の印象は違います。アメリカの現状を冷静に見極め、失敗を変革していく方向性を明快に打ち出していたからです。

よく、「大きい政府か小さい政府か」が議論の対象になります。しかしオバマは、機能しているかどうかが問題なのだと喝破します。日本でいえば、国民皆年金と言っても、払った保険料の記録が消えてしまえば、中福祉とか高福祉とか言葉をもてあそんでも意味がないということです。

 

人びとが働く場を得られて、人並みの給料を貰って、威厳をもって定年後の生活を過ごせる

 

のか否かと新大統領が問う意味を、派遣切りや雇い止めで、年末の寒空に「非正規労働者」たちを住居からも放り出して恥じない経営者たちは、果たして理解したのでしょうか。

いかなる社会も、繁栄する者のみを優遇していては繁栄が長続きしないのだとの認識。経済的成功とは、GDPの数値ではなく、繁栄が社会の隅々まで及んでいるかどうかで測られるという認識を、一国の最高指導者が示している事実が重要です。

アメリカは、少なくともオバマ新大統領は、ゆきすぎた競争や拝金主義を生むことになった新自由主義の過ちに気づいています。その過去の政策への訣別を決意したからこそ、高らかに宣言ができるのです。

 

「今日この日、我らがこの場にいるのは、我らが恐れよりも希望を選んだからだ」

( On this day, we gather because we have chosen hope over fear. )

 

これらの言葉が、どうして格調高くないと言えるのでしょうか。

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