後期高齢者医療制度はその哲学に重大な誤りがある(第63回2008年6月14日)

4月から実施されたこの制度には、7割以上の国民が反対しています(毎日新聞の世論調査では77%)。民主党はじめ野党は廃止法案を参議院で可決しましたが、衆議院で絶対多数を擁する与党の反対で成立(つまり制度の廃止)は見込めません。

政府・与党は世論の反発を考慮して、「見直し案」をまとめました。所得の低い方々への軽減率を増やしたり、家族名義の口座からの天引きを認めるとするなどですが、本質的とはいえない場当たり的なゴマカシ策に過ぎません。ご高齢の方々のみならず有権者の大半から批判されているのは、この制度の考え方そのものだからです。

75歳以上を後期高齢者と称し、それまで加入していた保険から強制的に離脱させるのがこの制度です。その理由を、舛添厚労大臣は「医学的なデータをとると75歳以上では病気で寝たきりになる人が増える傾向にある」と説明しています。これは本末転倒です。医療費が高額になるなら、なおさらすべての世代で支える必要があります。75歳以上だけの保険制度を設ければ破綻するのは目に見えています。そして破綻を避けるためには保険料を値上げするしかありません。今後の保険料の伸び率が75歳以上と現役世代では倍近い開き(7年後に39%と23%)があるのです。

 

◆ 75歳で線引きするのが問題 ◆

制度導入の真の目的が75歳以上の医療費抑制であることは疑いありません。医療費高騰の実態を明らかにして、高齢者が心ゆくまでの治療を受ける自由を奪おうとする本音が透けて見えます。だから、血の通わない、冷たい仕打ちと感じられるのです。「かかりつけ医」を決めて診療報酬を定額にすること。保険で人間ドックが受けられないこと。子供の扶養家族になっているのに、夫や妻とも切り離して新制度への加入を強制すること。これらのすべてが、「財政」や「効率」の名のもとに、戦後の復興を支えてきた世代への思いやりのかけらもない政策を反映しています。

この冷酷な制度を是が非でも維持しようと、政府・与党は嘘の上に嘘を塗り固めています。根拠もないのに「低所得層のほとんどは保険料が下がる」とテレビで叫び続けた自民党の厚労族議員。公明党は「収入ゼロの人から保険料は取りません」と機関紙で宣伝しましたが、配偶者や子供の扶養家族になっている「後期高齢者」からも保険料を徴収する制度なのです。厚労省は制度導入後の5月中旬に初めて負担の増減の実態を調査し、12類型別のサンプルから69%の世帯で保険料が減少したとの結果を発表しましたが、欺瞞(ぎまん)です。75歳以上の1300万人のうち、現在払っていない200万人を除いて計算しているからです。ゼロだった人が払うようになったら負担増に数えるのが当然ですから、正しくは55%です。

 

◆ 低所得ほど負担増になっている ◆

逆に、この調査で「負担が増えるのは高所得者で、低所得者は一般的に軽減される」という従来の説明は誤りだったことが明らかになりました。東京23区など大都市部は、年金収入177万円未満の78%が負担増です。埼玉県の市町村のうち「子供夫婦と同居し年金受給額79万円」の類型では79%の55市町村で負担増。同400万円の場合の44市町村と比べて明らかに多い結果となりました。埼玉10区内では、坂戸、ときがわ、鶴ヶ島、嵐山、滑川、東松山、小川、鳩山がこの順に負担増、吉見、川島は負担減とされています。

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